なべさんぽ

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カラオケが苦手な貴方へー誰のための歌会か?ー

 新型コロナウイルスによる自粛が終わりを迎えつつあるこの頃ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?「大勢で集まるのはよくない」ということで飲み会が開き辛かったり、スポーツ観戦や観劇にも行き辛かったりしましたが、そろそろ制限が完全に撤廃されそうです。またコロナ以前の生活に戻りそうですね。

 

 自粛中の制限に関しては「大声を出すのはよくない」というものもございましたから、これが撤廃されますと、今後他人とカラオケに行く機会が増えてくるかと存じます。これはカラオケが苦手な方にとっては困ったことと存じます。嫌だと言っても誘ってくる友人や同僚がいて、あんまり断るのもよくないかと思って付いていく、歌を聴いても歌っても面白くない、そのうち慣れるかと思って何度か行ってはみたが、いつになっても面白くならない、あーあ、嫌だなあ、でもいい大人だからこういうことも我慢しなくちゃ行けないんだろうな、うぅ、ツラい、コロナ前からこんな風に思っていた方はコロナの制限がかえって好都合だったかもしれません。

 

 今回は「なぜカラオケが苦手なのか?」ということについてお話しし、カラオケが苦手な方のカラオケボックスにおける居心地の悪さを少しでも緩和してみたいと思います。

 

 

  1. 技術の問題
  2. 距離の問題
  3. 礼儀の問題

 

1.技術の問題

 「カラオケが苦手」と申しますと「歌うのが苦手」だという方が多いかと思いますが、「聴くのが苦手」という面もございます。自分が歌うのがイヤな方は見落としがちですが、他人の歌を聴いているのだって居心地が悪い思いをするものです。この記事では歌う時・聴く時の両面についてお話しします。

 

 さて、歌を歌うといいますとまず問題になるのが歌の「技術」です。音程・リズム・強弱・響き・感情など、歌を評価する客観的基準というものがございます。それが歌の技術ですが、真面目な方は「人前で歌を披露するのなら、それなりの技術を身に付けなければならない」と考えます。もし、真面目な方が「自分の歌の技術は未熟だ」と考えていたら、人前で歌う時に「こんな下手な歌を人前で歌うなんて恥ずかしい」と思うでしょう。また反対に、真面目な方が他人の下手くそな歌を聴かされたら「下手だな、つまらない」とお感じになるでしょう。歌の技術にこだわってしまう真面目な方は自分や他人の歌の技術が未熟なためにカラオケに苦手意識を持ちます。

 

 しかし、そんなに真面目な方はあまりいないのではないでしょうか。と申しますのもカラオケは素人が歌を歌う場ですから、そもそもヘタクソであることが前提です。そんな場で自分や他人の歌に対して「歌が下手だな」なんて言うのはおかしなことです。

「シロート相手に何言ってるんだよ、オレたちはプロじゃないんだぞ。下手でもいいじゃねえか、愉快にやろうぜぇ」

です。

 

 もし、「カラオケは素人が下手な歌を披露する場である」という前提を知っていて、それでもカラオケを苦手に感じる方がいるとしたら、それはその方が他の参加者との間に感じる「距離」にあるでしょう。

 

2.距離の問題

 この「距離」とは、もちろん物理的な距離ではなく気持ちの話です。この文章をお読みになっている皆さんは職場の上司・同僚たちとのカラオケや、あまり仲がよいわけではない友人たちとのカラオケを想定していることでしょう。それというのも初めに私が「カラオケが苦手だという方の話をする」と申し上げて、皆さんはカラオケが「苦手だ」と感じる状況として「そんなに仲良しではない人たちとのカラオケ」を思い浮かべたからです。皆さんは家族や仲のよい友だちとのカラオケでは「苦手だ」とあまり感じないでしょう。

 

 家族や仲のよい友だちは個人的な付き合いが長いため皆さんのことをよくご存じです。音楽の趣味も知っています。皆さんが歌うと「ああ、あいつの好きなあの曲か」と歌を聴く側の人たちは思います。あなたが好きな曲がどういった曲か、どんなときにあなたがその曲を聴いていたか、実際に知っていたり、想像して理解したりして分かってくれます。反対に皆さんも他の人が歌っている時に「ああ、あいつの好きなあの曲か」と分かります。お互いに歌を受け止めることが出来るのですね。

 

 ところが職場の上司・同僚は皆さんの個人的な生活をよく知りません。あまり仲がよいわけではない友人たちもそうですし、皆さんも相手の個人的な生活を知りません。ですから皆さんは歌を歌うときに「私の歌は果たしてこの人たちに受け止められるのだろうか?」と大変不安になるわけです。反対に皆さんは他の人が歌っているのを聴いても「ふーん」としか思えず、どう受け止めたらよいかが分かりません。知らない曲は言うまでもなく、知っている曲を歌われても、「この人は一体何を思って私にこの曲を聴かせるの?」と困惑します。これではカラオケで居心地が悪くなるのも当然です。

 

3.礼儀の問題

 カラオケで困惑する人もいれば全く困らず愉快に歌っている人もいます。カラオケが苦手な方からすると愉快に歌っている人は不思議に見えます。「なんで平気で歌えるんだ?何を考えているんだろう?」という疑問符が沸いてきます。愉快に歌っている人は何も考えていません。ただギャーギャー喚いていられればそれでよいのです。

 

 カラオケが苦手な方は、「よく知らない相手に対して、相手が分からないような歌を歌ってはいけない」と考えます。大人同士の付き合いですから、相手を無視してギャーギャー喚くことなんて出来ません。1人で勝手によろめいてうっとりして気持ちよくなって歌っていたら恥ずかしいです。相手が分からないような歌は歌えない、かといって相手が分かる歌も分からない、だから何も歌えない、こういうことになります。反対に相手の歌を聴く時も、自分に分からない歌を歌われたら不快です。自分が軽く扱われている気がして嫌です。「そんなに歌いたいんなら友だちとカラオケ行けよ!オレを誘うな!」です。

 

 カラオケに誘ってくる相手に足りないのは「礼儀」です。「自分とは違う相手がいて、その相手も楽しめるような場を用意しないといけない」こういった意識を持って歌会を開催しないと、不快を催す方が出てしまいます。自分とは違う他人に対する礼儀はカラオケという緩い場にも適用することが必要です。カラオケは一部の人のための場ではなく、その場にいる全員のための場です。主催者にはそこのところをよく考えて欲しいものですね。

 

 

 最後に私が実践しているカラオケにおける礼儀を紹介したいと思います。

 1つ目は歌の説明をすることです。今から自分が歌う曲はどんな曲か、その曲にどんな気持ちをのせて歌うのか、自分はどんなときにその曲を聴いていたのか、といったことを語ってから歌うと、よく知らない他人にも楽しんでもらえます。初めは難しいですが慣れてしまえば簡単です。

 2つ目は季節の歌を歌うことです。春に春の歌を歌えば、聴く相手は「ああ、そういえば春だな」と納得して聴いてくれます。とても簡単なことなので、歌の説明よりこちらの方がオススメです。季節の他にも年中行事や花の歌も歌いやすいです。

 参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

 

 今回はここまでです。カラオケが苦手な方は、ご自分がカラオケに苦手意識を抱いている理由がお分かりになったでしょうか?反対に、カラオケに苦手意識を全く持っていない方は、他人に対しての礼儀をわきまえる大切さをご理解いただけたでしょうか?歌は人同士が気持ちを通わせるためのものです。歌会は居心地の悪い場ではなく気持ちのよい場にしたいものです。

 それでは。