なべさんぽ

ちょっと横道に逸れて散歩しましょう。

創作『キレやすい台風』

 日ごとに涼しさが増し、秋めいて参りました。毎年秋には日本列島に台風が来襲しますが、先日台風に関するお話を作りましたのでブログにあげておきます。

 私は塾講師をしておりますが、小学4年生の国語の授業で、変な言葉からお話を書くということをしました。そこで私は『キレやすい台風』というお題でお話を書きました。だから変な題名になっております。
 




『キレやすい台風』

 ある夏のことです。カンカン照りが続いて村は干上がってしまい、田んぼの稲たちはみんな元気がありません。困った村人たちは神社に集まってお祈りをしました。

「神さま、神さま、このままカンカン照りが続いたら、秋にお米の収穫ができません。どうか雨を降らせてください」

 お祈りを聞いていたのは神社に住む天狗どんです。さっそく出かけていき、山のてっぺんから空に向かって呼びかけました。

「おおい、雲くん、雲くん、カンカン照りで村のみんなが困っているんだ。こっちに来て雨を降らせてくれないか」

 するとたちまち空が暗くなり、雨が降りだしました。稲たちは元気を取り戻し、葉がつやつやに輝いています。
 天狗どんは雨のお礼を言おうとしましたが、なんだかようすがおかしいことに気づきました。。雨はザバザバ降っているし、風がビュービュー吹いているのです。

「おーい、天狗どん、天狗どん、ボクだよ、台風だよ」

 なんと、やって来たのは雲くんではなくて台風くんでした。
「雲くんが留守だったから僕がかわりに来たんだ。お役にたてたかな」

 雨が降ったのはよかったけど、ザバザバ降る雨で稲たちはアップアップ溺れそうだし、ビュービュー吹く風で村の家たちはガタガタふるえています。あわてて天狗どんは言いました。

「おおい、台風くん、台風くん、困るなあ、ザバザバ降る雨で稲たちはアップアップ溺れそうだし、ビュービュー吹く風で村の家たちはガタガタふるえているよ。悪いけど、帰ってくれないかな」

 それを聞いた台風くんは、顔を赤くして言いました。

「なんだい、せっかく来てやったのにその言いぐさは、フンだ」

そうして怒って帰ってしまいました。



 しばらくすると、またカンカン照りが続いて村は干上がってしまい、田んぼの稲たちはみんな元気がなくなってしまいました。困った村人たちはまた神社に集まってお祈りをしました。

「神さま、神さま、このままカンカン照りが続いたら、秋にお米の収穫ができません。どうかまた雨を降らせてください」

 お祈りを聞いていた天狗どんはさっそく出かけていき、山のてっぺんから空に向かって呼びかけました。

「おおい、雲くん、雲くん、カンカン照りで村のみんなが困っているんだ。こっちに来て雨を降らせてくれないか」

 するとたちまち空が暗くなり、雨が降りだしました。稲たちは元気を取り戻し、背筋がピンと伸びています。
 天狗どんは雨のお礼を言おうとしましたが、なんだかようすがおかしいことに気づきました。。雨はバチバチ降っているし、風がビュンビュン吹いているのです。

「おーい、天狗どん、天狗どん、ボクだよ、台風だよ」

なんと、やって来たのは雲くんではなくてまたしても台風くんでした。

「雲くんが留守だったから、またボクがかわりに来たんだ。お役にたてたかな」

 雨が降ったのはよかったけど、バチバチ降る雨で稲たちは痛そうだし、ビュンビュン吹く風で村の家たちはグラグラゆれています。あわてて天狗どんは言いました。

「おおい、台風くん、台風くん、困るなあ、バチバチ降る雨で稲たちは痛そうだし、ビュンビュン吹く風で村の家たちはグラグラゆれているよ。悪いけど、帰ってくれないかな」

 それを聞いた台風くんは、顔を真っ赤にして怒鳴りました。

「なんだいなんだい、せっかく来てやったのにその言いぐさは、フンだ、フンだ」

 そうして怒って帰ってしまいました。




 しばらくすると、またまたカンカン照りが続いて村は干上がってしまい、田んぼの稲たちはみんな元気がなくなってしまいました。困った村人たちはまたまた神社に集まってお祈りをしました。

「神さま、神さま、このままカンカン照りが続いたら、秋の収穫ができません。どうかまたまた雨を降らせてください」

お祈りを聞いていた天狗どんはさっそく出かけていき、山のてっぺんから空に向かって呼びかけました。

「おおい、雲くん、雲くん、カンカン照りで村のみんなが困っているんだ。こっちに来て雨を降らせてくれないか」

 するとたちまち空が暗くなり、雨が降りだしました。稲たちは元気を取り戻し、穂をジャラジャラ言わせて笑っています。
 天狗どんは雨のお礼を言おうとしましたが、なんだかようすがおかしいことに気づきました。雨はドバドバ降っているし、風がゴーゴー吹いているのです。

「おーい、天狗どん、天狗どん、ボクだよ、台風だよ」

 なんと、やって来たのは雲くんではなくてまたまた台風くんでした。

「雲くんが留守だったから、またまたボクがかわりに来たんだ。お役にたてたかな」

 雨が降ったのはよかったけど、ドバドバ降る雨で稲たちは流されそうだし、ゴーゴー吹く風で村の家たちは今にも飛ばされそうです。あわてて天狗どんは言いました。

「おおい、台風くん、台風くん、困るなあ、ドバドバ降る雨で稲たちは流されそうだし、ゴーゴー吹く風で村の家たちは今にも飛ばされそうだよ。悪いけど、帰ってくれないかな」

それを聞いた台風くんは、顔から湯気を吹き出して叫びました。

「どうしてみんなボクに『あっちいけ』っていうんだよ」

 すると、ドバドバ降る雨は滝となって辺りを流れ、ゴーゴー吹く風は龍となってそこらを飛び回りました。天狗どんは龍に弾かれて、あっちのお山まで飛んでいってしまいました。
 山は崩れ川はあふれ、そこらじゅう水浸しの泥まみれ。稲たちは滝に打たれて田んぼごと流されてしまい、家たちはみんな龍に壊されてしまいました。

 
 結局その秋にお米の収穫はできませんでしたとさ。